胃透視検査
バリウムを飲んで胃のレントゲン写真を撮影します。体の向きや角度に変化をつけながら胃の表面にバリウムを広げて、全体像や表面の凹凸をリアルタイムで確認することができます。 下部食道括約筋の締まり具合、食道や胃の位置、食道裂孔ヘルニアの有無などがわかります。
食事の後に違和感や不快感がある方、具体的には、ジリジリ・ヒリヒリと焼けるような感じ(灼熱感)や痛み、胸に熱いものがこみあげる感じ、ムカムカする感じのことです。こうした状態を「胸やけ」と呼んでいます。
胸やけは決してめずらしい症状ではありません。厚生労働省が行っている保険や医療などについての基礎的なことがらについての全国的な調査「国民生活基礎調査」(令和元年)によると、何らかの体の不調を訴える人のうち、約13人に1人が「胃もたれ・むねやけ」があると回答しています。また、男性よりも女性の方がやや多く、男女とも年齢を重ねるとともに増加する傾向にあります。
胸やけの症状・感じ方・表現には個人差があり、概して食後のみぞおち辺りの違和感や不快感を指していますが、そうした症状が一過性のものであれば、それほど心配することではありません。たとえば、刺激物や甘いものの食べ過ぎなどによって起こる胸やけであれば、時間と経過とともに治っていきます。
その一方で、注意が必要となる胸やけもあります。
これらのような症状がある場合 には、原因となる病気が隠れていることが考えられます。
胸やけは、さまざまな原因で胃酸を含む胃の内容物が逆流し、酸の刺激に弱い食道の粘膜を刺激することで起こります。逆流の原因としては次のようなことが挙げられます。
ストレスや過度の飲酒、不規則な生活、 加齢などによって、胃と食道のつなぎ目にある弁のような役割を果たす筋肉が緩んでしまうため逆流する
肥満や食べ過ぎ、お腹を締め付けるベルト・衣服・下着などによって腹圧が上がり、胃酸が食道に上がる
高たんぱく食、高脂肪食、甘いもの、暴飲暴食などの消化のため、胃酸が多く分泌され逆流しやすくなる
年齢を重ねるともに背中の丸まりや腰の曲がり、身長が低くなるなど、食道がたるんだ状態になりやすく、胃酸が逆流しやすくなる
逆流すること自体は珍しいことではありませんが、食道と胃のさかい目にある筋肉(下部食道括約筋)の働きに問題がなければ、逆流しにくくなります。下部食道括約筋は30代くらいまでは発達を続けますが、40代以降は筋力が弱まり衰え始めるため、加齢につれて逆流が起こりやすくなります。
逆流している状態が長く続くと、食道の粘膜を刺激し傷つけ続けてしまうため、ただれたり潰瘍ができたりしてしまいます。これが逆流性食道炎と呼ばれる病気で、胸やけの原因になります。
胸やけの多くは胃がんや食道がんなどの消化器が原因で起こりますが、心臓や肺の病気が原因となることもあります。
胸やけの検査としては、症状について自分で回答するチェックシートや薬を飲んでみて症状の軽減をみるPPIテストがあります。
また、逆流性食道炎が疑われる場合、バリウムを用いた胃のレントゲン検査(胃透視検査)や上部消化管内視鏡検査(胃カメラ検査)を行います。また、逆流性食道炎以外の原因が考えられる場合も胃カメラ検査を行うことが多くなっています。
バリウムを飲んで胃のレントゲン写真を撮影します。体の向きや角度に変化をつけながら胃の表面にバリウムを広げて、全体像や表面の凹凸をリアルタイムで確認することができます。 下部食道括約筋の締まり具合、食道や胃の位置、食道裂孔ヘルニアの有無などがわかります。
先端にカメラが付いた管を口または鼻から挿入し、食道や胃の壁の様子を内側から直接観察することができます。 粘膜の状態、境界の位置、食道裂孔ヘルニアの有無などがわかります。
※ 食道裂孔ヘルニア:食道下部に胃の一部が飛び出している状態、食道のたるみが原因で起こり、胃酸などの刺激が常にあるため炎症を起こしやすい
胸やけの原因を特定できたら、その病気の治療を行います。胃酸の分泌が原因となる逆流性食道炎のような病気であれば、胃酸の分泌を抑えるお薬の内服が第一選択となります。また腸の運動を改善するお薬や漢方も併用することがあります。
胃壁細胞にはプロトンポンプと共に、プロトンポンプの働きを調節する「カリウムチャネル」の作用を抑えることで、プロトンポンプからの胃酸分泌を抑制します。従来のPPIでは効き目が出るまでには数日必要、夜間の胃酸分泌抑制効果が足りないといった弱点がありました。タケキャブはその弱点を改良し、数時間で効果発現し、強力に安定して胃酸を抑える効果があります。そのため最近では逆流性食道炎の治療の第一選択となってきています。
胃壁細胞の胃酸発生に関わる「プロトンポンプ」に働きます。プロトンポンプの働きを抑えると胃酸分泌が強力に抑えられます。PPIは胃酸の分泌を抑える力が強く、効き目が長時間続くため、広く使用されています。
胃酸を分泌する細胞のヒスタミン(H2)受容体に働きかけ、胃酸の分泌を抑えるお薬。効果はPPIに劣るも、夜間の効果がPPIよりも高いとされています。
このほか、高脂肪食やアルコール、炭酸飲料、刺激物などを避けるなどの食生活の改善、おなか一杯食べない、食後すぐに横にならない、きつい洋服でおなかを圧迫しない、禁煙や肥満の改善など生活習慣を見直すことも逆流性食道炎の治療では重要です。