明確な原因では1つだけではなく、さまざまな原因・要素がいくつかが組み合わさったり、影響しあったりして、複雑に関わりあって症状が現れると考えられています。
特に重要とされるのは次の4つです。
機能性ディスペプシアとは、慢性的に胃の痛みや胃もたれなど不快な症状が現れているにも関わらず、症状の原因となる明らかな病気や異常がない場合に診断される病気です。機能性とは働き、ディスペプシアとは不快な腹部症状を現す言葉で、「胃の働きが悪くなったことが原因で起こる不快な症状」を意味しています。英語でfunctional dyspepsiaと表記するためその頭文字から「FD」とも呼ばれています。
これまでは同様の症状が現れた場合には、「慢性胃炎」とさられていましたが、炎症がなくても症状が現れることもあり、必ずしも症状と炎症に関連性があるとは限らないことが分かってきました。機能性ディスペプシアと診断される患者さんは、健康診断を受診した人のうち11~17%、症状が現れて医療機関にかかった人のうち44~53%といわれており、よくある病気の1つです。
しかし、その症状の現れ方は患者さんによって変わります。生命に関わる病気ではありませんが、より強い症状がある場合は日常生活に与える影響も大きくなります。
次の4つの症状のうち1つ以上の症状が週に数回程度あり直近の3か月間続いていること、症状が少なくとも6か月以上前に始まっていること、症状が辛く、日常生活に影響するものであることが、診断基準となっています。
①心窩部(みぞおち辺り)の痛み
②心窩部の灼熱感(焼ける感じ)
③食後の胃もたれ
④早期膨満感(食事を始めるとすぐにお腹がいっぱいになる感じがあり、最後まで食事が続けられない)
また、機能性ディスペプシア(FD)に多くみられる合併症として、胃食道逆流症、過敏性腸症候群(IBS)、慢性便秘などがみられ、その割合は患者さんの25~50%といわれています。その他、うつや不安などの気分障害、神経性障害を伴うことも少なくありません。
明確な原因では1つだけではなく、さまざまな原因・要素がいくつかが組み合わさったり、影響しあったりして、複雑に関わりあって症状が現れると考えられています。
特に重要とされるのは次の4つです。
食べたものを胃から十二指腸に送り出す動きの異常と、食事の際に胃を広げて食べ物を留めておく働きの異常
健康な人よりも軽い胃の拡張刺激や胃酸や脂肪に過敏になっている
不安、抑うつ症状、虐待歴などにより、脳と腸管の相互の密接な関連(脳腸相関)が起こり、胃や腸に変化が起こる
その他、ピロリ菌感染、感染性胃腸炎、遺伝、生活・食習慣の乱れ(アルコール、喫煙、不眠など)、胃の形態や機能低下などが原因となるとされています。
機能性ディスペプシア(FD)は症状の原因となる異常が見つからない病気ですので、まずは症状が現れている期間やその程度、食事との関連、体重減少など詳しく問診します。その上で、原因となり得る病気がないかどうかを調べる検査を行います。
このほかにも、患者さんからの主訴や病状により、詳しい検査を行うこともあります。
胃の働きの異常を引き起こすきっかけとなる状態に対する治療で、胃の動きの異常に対しては消化管運動機能改善薬、胃酸分泌の調整に対しては制酸薬を用いる。
普通の胃の働きを敏感と感じとっているため、抗不安薬、抗うつ薬、漢方薬を用いる(ただし改善効果は認められているが、十分な裏づけがあるかどうかはまだ分かっていない)
なお、機能性ディスペプシア(FD)の症状の ③食後の胃もたれ ④早期膨満感 のうち1つまたは両方が少なくとも週3日みられる「食後愁訴症候群」には、日本で開発された世界初の機能性ディスペプシア(FD)に適応がある薬剤、「アコチアミド」が有効とされています。
また、詳しい検査を行った結果、ピロリ菌感染が確認された場合は除菌治療を、他の病気が見つかればその治療を行います。